橋の下の話

怪談の類。

以下は実話であり実体験である。
その事を踏まえた上で読み進めて頂きたい。

実家の近所に、自殺の名所がある。
それは橋の下だ。

川の近くらだから、そしてまたいつも橋の影になっているから、夏でも涼しい。
たださわやかというには湿り気が多く、また人目に付きにくい場所だから、廃車とか粗大ゴミを捨てに来る者が多く居る為、基本的に汚い。
また同時に、私が子供の頃…、痴漢が出るから気をつけろ と言われたポイントであった。
(私が子供の頃は、小学生がターゲットとなり始め、たいへん騒がれだした頃だった)

そんなわけで、私にとってそこは自殺云々は抜きにしても「怖い」場所だった。

私が大阪に越す数年前に、老夫妻の無理心中があったとかで大騒ぎになった事がある。
最も、私が知っているその場所での自殺はその一件だけである。
名所と言っても、そう毎年起こっているわけではない。
様々な噂はあっても…。

ただそれでも、その一件でも恐怖だった。
実際にその場で死体を見たわけではないし、具体的な事は、事件があったというそれ以上は分からなかったが…。
(地元でも、誰もその事を話したがらなかった)

自殺の名所というと、霊とか、そういう話がありそうだと思う人が多い。
しかし実際にはなかなか起こり得るものではない。
まぁ、当然だとは思うが…。

しかし一度だけ、その場所で不可解な体験をした事がある。
正確には、その場所の近くで、だが…。

そして自殺の名所だという事とは関係ない経験だったとは思うが…。

今から8年ほど前の、夏の終わり頃だったと記憶している。

当時、ブックオフタイプの古本屋でバイトをしていた。
その日も、夜中の10時過ぎ、閉店時間まで仕事をしていた。
(田舎の店の閉店時間はせいぜいこんなもんだ)

バイトが終わり、真っ暗闇の中、家を目指して自転車をこいでいた。
家に帰るまでには、件の橋の上を必ず通る。
橋の作りについて言っておくと、コンクリート製の立派な橋だ。
ただ田舎の橋ゆえか、電灯の数は少なく、夜中はいつもぼーっとしか前が見えなかった。

その日、ふと橋の下に流れる川をふと覗き込むと、奇妙なものが動いているのに気づいた。

舟が浮いているように見えた。
小さな、せいぜい数人乗りの。
渡し舟、と言ったら分って頂けるかと思う。

明かりも何も点けずに、ただその辺りを行ったり来たり、明らかに不審な動きをした舟を私は見た。

更によく見ると、3人ほど人が乗っているのも見えたような気がする。
ただ、これは明かりがなかったから、見間違いの可能性もないわけではない…。
ともかく、舟と人。
そういうものが見えた。

不気味だった。
午後10時過ぎ。
ぼぉ…っと光る橋の上の電灯を除けば、真っ暗な闇。
そんな中、なぜか舟が、明かりも付けず、人は動かぬまま…。

ただバイトで疲れていたし、はやく帰りたかった。
頭の中に疑問符を残したまま、家に帰った。

ただ印象に残り事件だったし、何かと思い出していた。
そして思い当たる節が、無いことも無かったのだ。
実を言うと…。

おおよそ、笑われてしまうような仮説になってしまうと思うが…。

今の橋ができる前、そこには今のような立派な橋は無かった。
父親が子供の頃だから、5、60年ほども前の話だが。

木製の流れ橋があった。
流れ橋だから、大雨の翌日には、よく橋が無くなっていたと聞く。
その際、小学校へ通う時には、渡し舟が主に使用されていたらしい。

今の、コンクリート製の近代橋が出来て以後、用無しとなった舟は、使われなくなった。
そして長い間神社に奉納され、そのまま放置されていた。
しかし私が船を見た丁度一年程前に、供養の意味で、燃やされていた、のだ。

子供の頃、神社は遊び場だった。
友達とつるんで、神社のその舟で遊んでいた私には、どうも、こう思える。
あの舟が、供養されてから一年目の日、偶然通りかかった私に最後に姿を見せたのではないかと、ちょっとだけそう思えるのだ。

ただ、あの時からかなりの月日が経ったし、渡し舟の記憶など地域の人から消されようとしている今、真相は永遠に判らないと思う。



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