雑貨屋の事

雑貨屋という所が、子供の頃 憧れの対象だった。
そこに行けば何でもあるから、という簡単な理由。
火薬銃や風船や、何に使うのか良くわからない物など、不思議な未知の匂いを漂わせた場所。
そんな曖昧なイメージ…。

私が高校生だった頃、一件の雑貨屋があったので紹介してみたい。
その雑貨屋は通学路から少し逸れた所にあり、それほど大きくは無い…というよりかなり小さな店だった。

その店の看板には、“無い物は無い”という強気な売り文句が掲げられていた。
その時、まだその店には行ったことが無かった。
機会があれば行きたいという思いだけを秘めつつ…。

ある日、フロッピーディスクが必要になった事があった。
その時はパソコンをやっていなかったので、別の事に使う為だった…が、それは本題からずれるので省きたい。
ともかく、私はその時、その雑貨屋にフロッピーディスクを買いに行こうと思った。
 
張り切って雑貨屋へ行き、店内に入りフロッピーを探してみた。
しかし無い。無いのである。
まぁ、“無い物は無い”を信じていたわけではないが、さすがにフロッピーくらいはあると思っていたので少々面食らった。

しばらくすると店の主人のおっちゃんが「何か探してるのか?」と聞いてきた。
私は「フロッピーディスクを…」と答えた。

するとおっちゃんは「あー、それは無いんやー、無いもんは無いんやー」と即答してくれた。

…?

一瞬、言葉の意味を図りかねたが、数秒後、理解した。
“無い物は無い” 
その売り文句の意味は『この店に無い物なんて無いぜ』という意味ではなく『無い物はいくら探しても無いんだよ』という意味での“無い物は無い”
おっちゃんの軽いジョークだったのだ。

少々呆れて店を出た。
ここで終われば、まぁ、少し変わった雑貨屋で済むと思う。ただ話は少し続く。

私がその店でフロッピーを買い損ねてから数ヶ月、その雑貨屋は潰れてしまったのだ。
通学途中に店の看板が外されているのを見つけて気付いた。

因果応報、やっぱりそういう店だった。

…そうなるかと思いきや、看板が外されてから数日、そこには別の看板が掲げられる工事が始まった。
雑貨屋は経営不振で潰れたのではなく、単に店を模様替えするだけだったようだ。

工事が始まってから数週間、その店はカレー屋に変貌していた。
今度は、“本格インドカリー専門店”の看板が掲げられている。

雑貨屋やめてカレー屋とはなかなか思い切った店と思った。
雑貨屋の一件で少しその店に興味を抱き始めていた私は、友人4人ほどを誘い、その店に行ってみる事にした。
店内に入ると、そこにはお釈迦様の像や 何故か信楽焼きのタヌキの像などが置かれてあり、非日常なムードが漂っていた。
言うなれば新興宗教的雰囲気。そしてレジにはあのおっちゃん。

…兎も角、カレーである、カレー。
我々はカレーを食べに来たんである。店の雰囲気なんぞどうでもいい。
しかしメニューを見て驚いた。
ビーフカレー:600円、甘口カレー:600円、辛口カレー:800円、カツカレー:1600円、
…色々と突っ込みたいがまぁここまではいい。その後が問題だった。

手打ちうどん、手打ちソバ、醤油ラーメンなど、値段は忘れたが、何故か麺系のメニューまで取り揃えているのだ。
“本格インドカリー専門店”ではなかったのだろうか…。

私はその時、ビーフカレーを注文した。というか全員それを注文した。
私は辛口が良かったのだが、何故に辛いと200円高いのかを考えると不条理に思えてきたのでやめたのだった。
友人はカツカレーが良かったらしいのだが、カツが入ると何故にそんなに高くなるのか不条理でやめたそうだ。
そして注文の品はほぼ同時に運ばれてくる。見た目は具が小さかった。そして皆で一斉に食べる。

むしゃむしゃ

そして何口か食べた所で友人の一人が漏らした。
「ボンカレー……」
と。

そう、それはボンカレーの味がした。
…別に、ボンカレーがダメなわけでもレトルトカレーがダメなわけでもない、むしろ美味しい。
しかし、
“本格インドカリー専門店”と言っておいてそれでは…。

会計を済まし、店を出る。
しかしもう怒りの念などは全然なく、むしろ、いい経験だった…とか思っていた。
怒りは通り越すと呆れになるようだと、この時悟った。

さて、この店 もう少しだけ話は続く。
私たちが食事をした数ヵ月後… カレー屋になってから4ヶ月くらいか…、やっぱり潰れてしまったのだ。
まぁ、本格カレーといってボンカレー出すようでは…、今度こそ懲りただろう。

…そう思っていたら、、看板が外されてから数日、そこには別の看板が掲げられる工事が始まった。

またか…。
工事が始まって数週間、そこには“しゃぶしゃぶ食べ放題”の看板が掲げられていた。
今度は、その元雑貨屋でカレー屋のおっちゃん、しゃぶしゃぶ屋を作ったようなのだ。

…今回 看板は割と正常なのだが…。
その事実を知った私はどうにもこうにも興味が湧いていた。
あのおっちゃんが新たに経営するしゃぶしゃぶ屋、ある意味で最高に楽しめると思う。

カレー屋時代に誘った友人もそれなりの興味を示している。
しかし、しゃぶしゃぶは高い。
おいそれとは行けない。

しかしそんな日、あることがきっかけでその店に行く事が出来た。
しゃぶしゃぶ屋は事業拡大の一環として、しゃぶしゃぶ以外のメニューを扱う事にしたようだった。

“しゃぶしゃぶ食べ放題” その看板の横に“ソフトクリームはじめました”という看板が立った。
…なんの共通性があるのかはわからないが…、ともかく、それにより私たちはソフトクリーム目当てでしゃぶしゃぶ屋へ行く事になった。

そして店に到着。
“ソフトクリームはじめました”の看板には 大きな文字で書かれた『ソフトクリームあります』の他に、
小さな文字で書かれた言葉が沢山載っていた。
『北海道の新鮮な~~』とか『上質の香り』とか、いろいろ書いてあった。

私たちは期待に胸を膨らませて店内に入った。
そしてそこで見てしまったのだ…。
冷凍庫に入った、

こういうソフトクリームを。

…こんな、スーパーで買えるようなソフトクリームの為に…、このしゃぶしゃぶ屋はでかい看板を作り、我々はそれにだまされ、店まで誘導されたのだ…。

なんつー店だ。
あほだ、あほすぎる。
何を考えているのか全くわからん。

その時ばかりはさすがに買わなかった。
買わないまま店を出た。

…しかし、世の中わからんもんである。
そのしゃぶしゃぶ屋、出来てからかなりの年数がたったが…、まだ潰れてないんである。
あるいは、もしかして主人のおっさんはもの凄い金持ちで 道楽で店をやっているのだろうか。
そして、しゃぶしゃぶ屋の形態が気に入ったので続けているだけなんだろうか。

それは分らない、分らないが…、
いつか、今度はしゃぶしゃぶ目的で行ってみようかと思わないこともないで過ごしている。
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