帝国防空隊奮戦す

「カラス野郎め、好き放題やりやがって…」
ここのところサラマンダー爆撃隊はその数を増し、連日のように帝国基地を襲っていた。
その被害は徐々に増え、対策は急務であった。
期待の新鋭シンカーは、その実サラマンダーの高度に達することすら困難であり、しかもシンカーはフロレシオスやアクアドンへの対抗がサラマンダー以上に急務だったため、その大半が海軍に納入された。

だが期待の新鋭はもう一つあった。
重装甲と豊富な対空火器を備えた移動トーチカ・マルダーである。
朝方、地響きを立て、ここエツミ基地に6機のマルダーが納入された。
「今日からはこいつで墜としてやるぜ」

そのゾイドは、重装甲重武装のゲルダーやザットンと比べても大きく、いかにも重そうだった。
「分厚そうだな。どの位あるんだ?」
整備兵を見つけ、装甲を指差し聞くと、100mmもあるという事だった。
しかも新型の複合材を使っているので、モルガの前面装甲やゲルダーの前盾よりはるかに強力、むしろレッドホーンに匹敵するというものだった。

「ただその分、悪いところもあるんです。重すぎて加速性能がすこぶる悪い。とても他の機と戦隊は組めません。またトップヘビーで横転しやすいので急な旋回は厳禁。それから…、重い機体を無理に動かしているので、エンジンの機嫌が悪いのと、騒音ですね」

実際に訓練してみると、それがよく分かった。
ドライバーは常に、動きを他の機の倍は慎重にしなければならない。
また、聞いていた以上にエンジンはうるさく機嫌が悪かった。
殻の中のコクピットは火器管制員でガンナーと呼ばれていたが、その実、動いているほとんどの時間を、エンジンの機嫌をとる事に費やす有様だった。
騒音は特に問題で、慣れぬ内とはいえ、最初の2日で3人のガンナーが頭痛で一時休養した。
「いっそ固定砲台にした方がいいかもしれん…。旋回くらいはさせてもいいかもしれんが」

だが砲力は申し分なかった。
4門の砲は、どれも強かった。
特に主武装・中型自己誘導ミサイルは、豊富な弾数と合わせ、帝国最高の能力を誇っていた。
高高度を飛ぶサラマンダーの高さまで余裕で達し、そして速かった。
また最大の特徴は、命中せずとも近接すれば自動的に自爆し、その強烈な爆風や破片でもってダメージを与えることだった。

その日、サラマンダー爆撃隊はついに、このエツミ基地を狙い、総勢6機で飛来した。
「今日は帰さねえぜ」
訓練を積んだ、総勢6機のマルダーが迎え撃つ体制を取った。
「6対6だ。一機ずつ喰えるぜ。各機気合入れていけ!」

サラマンダーは爆装してすら超音速巡航出来る。
ぐんぐんと編隊が近づいてくる。
「もうすぐだ。いいか、マルダーの装甲は爆撃くらいじゃビクともせん。思い切りやれ!」

各機、サラマンダーの進路に合わせ、射撃位置に移動する。
結局、エンジンの不調や許容し難い騒音は解決しなかった。
だがさすがに、ガンナーも今日ばかりは張り切っている。
この戦いは、その価値があった。

「電探、いけるか!?」
「もう少し」
マルダー部隊には、高空を高速で飛ぶサラマンダーを正確に捉えるため、全ての武装と大部分の装甲を削り、レーダー機能だけを飛躍的に高めたゲーター改を随伴させてある。
この部隊のために特別に改造した一機だ。
「捉えた!」
「よし、全機ミサイルシステムをゲーターにリンクさせろ!発射!!」

シュッ…!
空を切り裂き、6発のミサイルが一気に高高度に向けて飛んだ。
「墜ちろ、カラス野郎!!」

「敵編隊、何かを放出…フレアだ!」
ドゴゥ…!
高空で大爆発が起こる。
だがその全てはフレアに引き込まれ、サラマンダーには何らダメージを与えていなかった。

「くそっ、既にミサイル対策をしてやがったとは…。しかし弾はまだまだある。これからだ!」
「ゲーター、もう一度奴を捉えろ」
「りょうか……、ダメだっ、奴の格納庫が!」

ヒュゥウウウ…、
独特の甲高い音を立て、サラマンダーから膨大な量の爆弾が降り注ぐ。

ドゴォォォ!
たちまち一帯が紅蓮の炎に包まれる。
指令本部が吹き飛び、備蓄燃料に引火し大爆発を起こした。
「くそったれ!!各機、状況は!?」
強力な装甲のおかげで、マルダーは全機無傷だった。また、奇跡的に横転もしていない。
だが…、
「く…、ゲーター…」
改造で脆くなったゲーターは、無残に破壊されていた。

「くそっ、これじゃどうやって撃ちゃいいんだ」
マルダーのレーダーでは、高高度を飛ぶサラマンダーは捉えきれない。
いや、しかしゲーターはかすかに生きていた。
ノイズ混じりのかすかな通信が聞こえて来る。
「…こちらゲーター… マルダー、聞こえるか……」

「生きていたか!早速で悪いがもう一度捉えられるか!?」
「…いや、レーダーはかろうじで生きているが、ロックオン情報をリンクさせるシステムが壊された」
「くそっ、お手上げってわけか」
「一つだけ手がある。ケーブルをマルダーに直結させるんだ!」

まだ燃え盛る周囲に飛び出て、ゲーターのリンクシステムのケーブルを、マルダーのコックピットまで引っ張る。
「これで大丈夫だ。さぁ、またすぐにロックオンしてやるから次こそ終わらせてやれ!」

大破したゲーターが、再びサラマンダーを捉える。
その情報が直結したケーブルを伝い、マルダーのミサイルシステムにリンクする。

「撃てっ!!」
再び、空を切り裂いてミサイルが飛ぶ。
「もうフレアは残っちゃいないだろうな……」
祈るように見つめると、サラマンダーが回避行動に移った。
「しめた!やっぱりさっきので撃ち尽くしたんだ。さぁやっちまえ!!」

急機動でミサイルを振り切ろうとするサラマンダー。
だが必殺の一撃はついに3機のサラマンダーを捉えた。
ほぼ同時に命中音が聞こえ、真っ黒い煙を吐いて巨大な機体がグラリと揺れた。
「やったぜ!」
みるまに高度を落としてゆく。
「二度と来んな、カラス野郎! 来ても落としてやるけどな!」
中指を突き立て、大声で叫ぶ。

いやしかし、高度を半分ほどまで落としたところで、サラマンダーは再び体制を戻した。
マルダーのミサイルは、致命傷は与えていなかった。
「直撃でまだ飛べるだと……。飛行ゾイドのくせに何て頑丈さだ……」
さすがにそれ以上高度は上がらないようだが、安定した飛行に入り離脱してゆく。
絶望がマルダー隊を飲み込んだ。
しかし…、

「こちら海軍411航空隊。貴隊の攻撃でダメージを負ったサラマンダーを確認した。あとは我々に任せよ」
「海軍のシンカーか!」
4機のシンカーが飛び抜けていった。
いつもなら高度も速度も足りないが、今日の相手は手負いだ。
「手柄を取られるのはシャクだが………、やっちまえ!!」

ようやくサラマンダーに追いついたシンカーは、最もダメージの多い機体を包囲、ついに集中攻撃をかけた。
サラマンダーはなおも抵抗する。
手負いとは言え圧倒的な体躯差がある。
常にシンカーを威圧し、巨大な爪で1機を握りつぶす。
だがさすがの怪鳥も、そこで力尽き、腹部のゾイド生命体を貫かれた事により真っ逆さまに落ちていった。

この日、サラマンダー1機と引き換えに、帝国はゲーター1、シンカー1、エツミ基地の設備の多数、大量の備蓄燃料を一挙に失った。
あまりにも多い代償であったが、サラマンダーを初めて撃墜した日でもあった。

この日を境に、より防御を固めたサラマンダーと、より強化されてゆく帝国防空部隊の戦いは、ますます激化してゆく事となる。
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