ラストリベリオン-後編-

以前書いていたゾイドSSの続き。
ラストリベリオン後編。
前編
中編

---------------------------------------------------

敵はマッドサンダーを中央に、左右にウルトラザウルスが各1、ゴジュラスが満遍なくといった具合。

「照準、ツインゼネバス砲は両側のウルトラザウルスに定めろ。頭部荷電粒子砲はマッドサンダーだ」
「了解。ただ今エネルギー充填率40%…、充填完了まであと6分」

「大事なところでヘバんじゃねぇぞ…」
両肩のツインゼネバス砲を見る。
さすがにまだ大丈夫な様子だが、整備も何もなしに戦い通しなのだ。緊張が走った。

「50%…」
オーロラインテークファンは回転を続ける。
遂に青いイナズマがデスザウラーの周囲を走り始めた。
「安全装置解除」
「了解………、頭部、右砲、左砲全て解除」

「60%…、頭部砲への充填完了」
既にデスザウラーの頭部はイナズマが何本も走り、光り輝いている。
「ホントにこいつを受け止めるのかよ、あいつは…」

「70%…」
ついにツインゼネバス砲へのエネルギー充填も急速に始まり、いよいよデスザウラーの上半身全てが光で覆われ始めた。
「念のためですが、3門全てマッドじゃなくて構わないんですね」
3門全てマッドサンダーにぶち込む。それはまさに、この機体が作られた目的だろう。
だが…、この敵大部隊。
仮にマッドサンダーを倒しても、ウルトラキャノン砲とゴジュラスMK-IIの長距離キャノン砲、合計30門近くの大砲を相手にすればデスザウラーとてひとたまりも無い。
撃てる回数は2回。
まず一斉目で護衛機を全て倒す。
そして二斉目で…、3連荷電粒子砲を撃ち込んでやる…!

「80%…、ツインゼネバス砲への充填順調」
ふいにウルトラザウルスが伏せた。
「敵、射撃体勢に入った!」
ゴジュラスも両方の脚をふんばり、射撃体勢に入る。
「くそっ、もうかよ!もうちょっと接近してからだと思ったんだが…!」
距離約20km。
実弾砲で一発必中を狙うにはまだまだ遠い。
だが敵は数の多さにまかせて撃つ気だ。
「エネルギー充填率は!?」
「84%、完了まで残り1分半…!」

「くそっ、腹くくれ!この距離ならそうそう当たらん」
実弾砲特有の発射轟音が轟き、瞬間、ものすごい数の砲弾が近くで炸裂した。
「くそったれ!初弾から思ったより正確じゃねえか!」
デスザウラーから100mほどの距離に、巨大なクレーターが何個も出来、大地がえぐれた。

続けてすぐに二斉射目が来る。
耳が潰れる程の轟音が轟く。
さっきより近い。
「くそったれっ、射角が合って来てやがる!」
「次は当たります!いったん退避した方が……!」
「充填率は!?」
「96%…!」
「…!ギリギリこっちの方が早く打てるぜ!射撃体勢を取れ」
「……少佐ならそう言うと思いましたよ…!」
デスザウラーを敵部隊の正面に向かせ、脚を踏ん張らせる。

「97%」
「照準、再度調整」
砲撃の衝撃で生じたわずかな射角のズレを修正する。
デスザウラーの頭部、ツインゼネバス砲が細かに動き、敵を睨む。

「98%」
「尾部アンカーを固定。対ショック体制を取れ」

「99%…」
「発射後はまぶしくてカメラが使い物にならん。レーダーパネルをしっかり見ておけ!」

「100%!」
「撃て!!」

グンッ…!!
デスザウラーの巨体が一瞬、衝撃で大きく揺れる。
「いけぇぇ!」

目も眩むような光の粒子が一斉にはじけ飛ぶ。
荷電粒子砲が、一直線に敵に向かって飛んだ。
「着弾……!全て命中」
ほぼ同時に、3門の荷電粒子砲が敵に当たる。
凄まじい荷電粒子の波の中で、幾つもの爆発が起こった。

「荷電粒子放出完了、砲身加熱!冷却装置作動します!」
「敵はどうなった!?」

共和国部隊は地獄絵図の中にいた。
予想もしていなかった3門の荷電粒子砲を受け、かすりでもしたゾイドはことごとく、その姿を溶けた鉄に変えていた。
いや、ただ一機だけ生き残っていた。

「やっぱりお前だけは生き残ったか……、マッドサンダー!」
「敵、突撃してきます」
味方全損の怒りに燃えたマッドは、最高速度でデスザウラーに突っ込む。
「荷電粒子砲、再チャージは!?」
「冷却完了するまでは無理です。あと7分ほど!」

「くそっ、冷却完了と同時に再チャージ!それまでは何とか戦ってやるぜ」
機動性はともかく、最高速度はマッドが上だ。
逃げる事は叶わない。
しかも最大エネルギーで荷電粒子砲を放出した直後だ。
反動でしばらくデスザウラー自身も全力を出せない。
しかし…、
「あれだけの荷電粒子砲を受けたんだ。ノーダメージではあるまいが……」
デスザウラーをマッドサンダーに一直線に向け、突撃する線上にどしりと構える。
回転する二本のドリル・マグネーザーが間近に迫る。

闘牛士のように直前で横によけ、その角の一撃をかわす。
だが、すぐさまマッドサンダーが首を振り、横殴りにマグネーザーを浴びせかける。
「グゥゥゥゥッ!」
激しい衝撃を何とかこらえる。
とっさに左腕でマグネーザーを受け止めたが、激しい火花を出し、デスザウラーの腕は容赦なくえぐられた。
「ジョイントがいかれた……!」
「くそっ、どこにそれだけのパワーが残ってんだ!…だが、しくじりやがったな」
打ち付けられた衝撃を利用し、そのまま側面に回りこむ。

目の前に雷神ただ一つの弱点・ハイパーローリングチャージャーが見える。
「叩き潰すにゃ、片腕で充分だぜ…!」
だが右腕を振り上げた瞬間、敵が動いた。
「敵、主砲旋回!ビーム砲が来る………!」
瞬間、マッドサンダーの背中が猛烈に光った。

大口径の衝撃砲とキャノンビーム砲、合計4門の砲が猛烈な勢いで放たれる。
ゼロ距離。外しようが無い。
デスザウラーの装甲はこの程度のビーム砲には耐えてみせる。だがこうも立て続けでは……、
荷電粒子砲を除きさしたる火器がないのは、デスザウラーの大きな弱点だ。
一方的に被弾し、ついに装甲が赤く溶け始めた。
「限界だ…!」
「くそったれっ!」

一旦デスザウラーを引かせる。
再びマッドサンダーと正面から対峙する。
「くそっ、元通りかよ」
「いえ、腕の分だけ不利ですね」
「くそっ、そりゃ言わんでいい。しかし時間は稼いだ。冷却は?」
「完了まで残り2分ちょっと」

「…よしっ、構わねぇ!チャージ開始だ!」
「そりゃ無茶です!ツインゼネバス砲が今度こそ耐え切れない!」
「バカ野郎、それでも無事チャージできる方に賭けるしかねえだろ」
「ここまできて自爆したら孫の代まで恥ですよ!」
「伝家の宝刀を持ったまま死んだら末代までの恥だ!チャージ開始!」
「……そりゃ少佐の言う通りかもしれません。しかしもうどうなっても知りませんよ」

オーロラインテークファンが再び回転し、空気中の荷電粒子を吸い込み始めた。
「フルチャージまで10分」
チャージを察したマッドサンダーが、再びデスザウラーに突撃する。
「…くそったれ、やっぱり待っちゃくれないよな」
チャージ中のデスザウラーでは動きも鈍い。
ささやかに頭部と腹部のビーム砲で抵抗したが、全て軽く弾かれる。

突撃。
かわす事も叶わず、生き残った右腕だけでマグネーザーを受け止める。
「くそっ、踏ん張れデスザウラー!」
つかみ所が良かったか、何とかマッドサンダーが止まった。
「ぐぅぅぅ…!デスザウラーを舐めるなよっ!」
しかし4足でただでさえパワーに勝るマッドサンダーは、片腕しかないデスザウラーをジリジリと迫っていった。
「チャージは!?」
「現在35%!完了まで6分半!」
「くそっ、それまで腕が保つわけもねぇ…!」
最後の力を振り絞り、渾身の力で腕を振り回す。
その意地にマッドの首が屈した。回された方向にマッドの首が一瞬だけ横を向く。
その隙に何とか下がり、距離をとった。

「チャージは!?」
「60%!残り4分…!」
「よしっ…、こうなったらもう…、射撃体制をとれ!」
デスザウラーをマッドサンダーに向かせ、大げさに荷電粒子砲の発射体制をとる。
マッドサンダーが再びマグネーザーを回転させ、こちらに突撃する準備を整える。

「70%」
かつて何機のデスザウラーが、こうしてマッドサンダーによって倒されたのだろう。
「今日こそ沈めてやるぜ!」

マッドサンダーが突撃する。
再び、右腕でそれを受け止める。
電磁クロウに大穴が開き、マグネーザーの先端が突き出た。
二度目のマグネーザーを受け、既に右腕のジョイントも限界だ。
ガシッ!
遂に右腕が付け根からもげ、マグネーザーに持っていかれる。
「許せデスザウラー、借りは後できっちり返してやる!」
ちぎれた右腕がマグネーザーに絡まり、一瞬だけ動きを止めた。
その隙に再び距離をとる。

「90%」
「照準合わせろ!」
頭部が、ツインゼネバス砲が、合計3門の荷電粒子砲がマッドサンダーを睨む。
ギュゥゥゥゥ!
右腕を強引に振り落としたマッドのマグネーザーが、再び回転を始める。
巨体が迫る。

「充填完了!」
「発射!!いけぇぇぇぇえええ!!」
再び、目も眩むような光の粒子が一斉にはじけ飛ぶ。
「ぶち抜け!」
「着弾!敵前頭部シールドに着弾!」

「うぉぉぉぉおおお!」
「砲身加熱!ツインゼネバス砲が…溶けます!やっぱり冷却が足りなかったんだ!!」
「構うなっ!尽きるまで最大威力で撃ち続けろっ!」
既にツインゼネバス砲は砲身が溶けはじめ、コックピット内の計器がうるさい警告を発した。
「暴発する………っ!」
ドンッ!
ほぼ同時に、両方のツインゼネバス砲が爆発した。
衝撃でデスザウラーの両肩がえぐれる。
もはや立っている事すら不思議なほど壮絶な姿だったが、奇跡的に頭部荷電粒子砲はまだ生きていた。
「頭部砲は最後まで撃ち続けろっ!」

ツインゼネバス砲を失った事で、かろうじでマッドサンダーが視認できるようになった。
しかし俺は衝撃を受けた。
「何てヤツだ…!」
マッドサンダーはゆっくり歩いていた。さすがに遅いが、一歩一歩とデスザウラーに迫ってくる。
「荷電粒子全エネルギー放出まであと10秒!」
9・8・7・・・、
ツインゼネバス砲と頭部荷電粒子砲、全力の荷電粒子砲をこれだけ受けてなおこの怪物は歩いていた。

「放出完了!エネルギーゼロ!」
荷電粒子砲を撃ちつくすと同時に、マグネーザーが触れるほどの位置にマッドサンダーの巨体が迫った。
「くそっ、バケモンめ……!」
いや、しかし…、
「敵、停止………、生体反応が消えていく……!」
「何だと!?」
「少佐!やりました!際どい所でしたがマッドサンダーを倒しました!!」
マッドサンダーは見事3門の荷電粒子砲を全て防いで見せた。だが防ぐと同時に全エネルギーを使いきり、その機能を停止したのだった。


「大したヤツだったぜ、お前は……」
死の直前までデスザウラーに迫り続けたマッドサンダーは、その身を静かに横たえていた。
コックピットから降り、その姿を見ながら感傷にふけっていると、ガラガラと音を立ててデスザウラーが崩れ落ちた。
戦いを終え、デスザウラーもまた力尽きたのだった。
重なるように眠る二機を見て、普段考えもしない宿命という言葉が頭をよぎった。
そして俺たちは、死した二機に向かい、無言で敬礼を送った。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
俺たちが共和国の増援に捕まり捕虜となったのは、一時間ほど後の事だった。
マンクス海峡が見える仮設収容所で、俺たちは他の捕虜と共に、ゾイドの残骸を片付け、使えそうな部品を見つけ整備・再生する事を命じられた。
しかし既に戦勝ムードに沸く共和は余裕で、収容所の生活は過酷という程でもなかった。

ある日、休憩時間に海を見ていると、水平線を埋め尽くすほどのウルトラザウルスの大艦隊が見えた。
いや、ウルトラザウルスではなかった。
腹の下にマッドサンダーを合体させ、海上輸送を可能とした改造タイプだった。
いよいよ、ニカイドス島への上陸作戦が開始されるという事だろう。

「数え切れん…。これだけの数のマッドサンダーを持ってるのかよ……」
「ニカイドス島は…、どうなるでしょうね」
「………まぁ、勝てんだろうな」
「……祖国の敗戦ですか」
「あぁ。だが……、帝国は…、誇りは残したさ」
「誇り、ですか?」

あの一戦以来、どうも俺の中の考えが変った所があったらしい。
以前は、敵を倒す事だけを考えていた筈だが………、
「俺たちは、帝国は…、情けなく負けたわけじゃない。潔く戦って負けた。誇りを残した」
「……」
「停戦後の条約がどうなるかは分からん。だが誇りさえあれば、国はまた蘇る事が出来ると、俺は思う」
「…マッドサンダー以上のゾイドも作れると?」
「いや、もう戦争はこりごりだ。戦争は共和国の勝ちで終わればいいさ。そういう事じゃなくてな……」

「停戦後しばらく…、政権は剥奪され帝国全土は共和国の占領下に置かれるだろう……。だが俺たちに誇りがあれば、再び帝国の独立を勝ち得る事も出来るだろう、とな」

「戦争はもう沢山だ。あの少年兵みたいな子供が生まれる時代がもう来てはいけない。だがそれでも…、やっぱり俺は共和国ではなく帝国の民である誇りは持ちたい。次の平和な時代には、誇りある帝国が素晴らしい技術力で共和国をリードしてやればいい」
「…それは素晴らしい意見ですね。少佐からそんな言葉が聞けるとは夢にも思いませんでしたが」
「からかうな。しかし俺はツインゼネバス砲を見て、やっぱり帝国の技術力は圧倒的だと思ったな。停戦後の経済戦では帝国が俄然優位だぜ」
「マッドサンダーもあれを防ぎ切ったじゃないですか」
「バカ野郎、途中でツインゼネバス砲が暴発したからだ。万全状態なら余裕だったぜ」
「そうですかねぇ…。けっこう、やばかった気もしますが」

「そこの捕虜、そろそろ休憩時間は終わりだ。作業にもどれ」
看守の声で、俺たちの会話は途切れた。

「じきにこの戦争も終わる」
大艦隊を眺めながら、看守がつぶやいた。
確かに、その通りだろう。
だがその先も、帝国の誇りをかけた戦いは続いてゆくのだ。
俺はそう思いながら作業に戻った。

どこから知れたのか、マッドサンダーと五分に渡り合い相打ちに持ち込んだ一件は収容所でも広まっており、俺たちはちょっとした有名人だった。
俺たちを訪ねてくる仲間も多い。

俺は戦いを語る際、戦いの経緯と共に必ず誇りを語るようにした。
平和な次代に向けての戦いが始まったと、俺は思っていた。
スポンサーサイト



プロフィール

三式

Author:三式
>HP(本家)はこちら
>掲示板

コメントはお気軽に!
コメントは
 @初めましての方も大歓迎
 @関係ない話題でもOK
 @但し宣伝のみ等はNG
 @名乗って頂けると嬉しい
という感じでお願いします。

リンク
カレンダー
06 | 2013/07 | 08
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
新着記事
最新コメント