共和国ゾイドのキャノピーは弱点なのか

共和国ゾイドの多くはキャノピー式をしています。
これについて「防御上の難があるが良好な視界が得られる利点もある」という事が言えます。
長らくキャノピー式を使用した共和国軍ですが、ディバイソンから徐々に装甲式に変化しカノンフォート……大陸間戦争で登場した新型からは全て装甲式になっています。
これについての通説は、「もともと共和国軍の技術ではキャノピー式しかできなかった。だが後の時代には徐々に装甲式も可能となった。中央大陸戦争に勝利し帝国技術を吸収した後は完全装甲式に移行した」だと思います。


今回はこの説に対して深く切り込みたいと思います。
と言っておいてなんですが、通説は正しいと思います。開発史を見れば明らかです。

ただし今回「深く切り込みたい」というのは「なぜ技術は後々まで発達しなかったのか」という部分です。
必要は発明の母と言います。

中央大陸はもともとヘリック王国という一つの国であった。それが内部分裂して誕生したのがヘリック共和国とゼネバス帝国です。
つまり誕生した時点では劇的な技術差は無かった筈。
共和国軍も帝国軍も、最初期に運用したのはガリウス、グライドラー、エレファンタスというヘリック王国時代に開発されたゾイド。
当然、キャノピー式です。
そこから何故、帝国は装甲式に早期にシフトしたのか。共和国は長らくキャノピーにしたのか。

やはり帝国は早期に装甲式にシフトする必要があり、それゆえにその為の技術を発展させた。一方、共和国はキャノピー式で構わない事情があり長らく据え置かれたと考えたい所です。


必要は発明の母といいます。
日本軍のゼロ戦は究極に燃費が良く空気抵抗も少なく繊細で神業的な設計をしています。
一方、米軍のグラマンF6Fは大雑把な設計も目立ちスマートとは言い難い。
が、それは資源も人も少なく「質でもって対抗するしかなかった日本」の事情と、資源も人も豊富にあり大雑把な設計であっても「そこそこの性能と量で押し切れば良い米国」の事情です。
そのような事情によって開発が進められ長く続くと、その国の技術的な特徴も出てきます。
共和国と帝国の技術的な差も、この例のような事情を考えてこそ深みが出ると思いました。

ではその必要とは何か。
最初にキャノピー式が採用されたのは「そうするしかなかった」からだと思います。
当時(ヘリック王国がガリウスを開発した頃)の技術では、まだモニター越しに良好な視界を得る術が無かった。それゆえキャノピー式になった。

さて、キャノピーは弱点なのだろうか。
もちろん被弾には弱いでしょう。防弾ガラスではあると思いますが、装甲部分ほどの強度はないと思います。
しかし、これは「キャノピーの強度」を問題にした発言ではあるが、「キャノピーが弱点なのか」を論ずるものとしては不十分だと思います。
なぜなら、被弾率の問題が考慮されていないからです。

敵を撃破するにはコックピットの破壊が有効です。
かのマイケル・ホバート技術少佐も「敵ゾイドを倒すのにその機体を完全に破壊する必要はない。敵のパイロットを倒すかコックピットを使用不能にすれば、勝利を得ることが出来る」と言っています。
ただし、これは簡単なようで難しい事です。

キャノピー=コックピットに命中させれば撃破できとして考えます。
ただし、砲は狙った場所に必ずしも着弾させられるかというとそうではありません。
発射後に風や大気状態の影響を受けて弾道がブレます。
下図を見てください。



これは、戦艦が大砲で敵艦を撃っている姿を示します。
赤丸の地点を狙って発射しています。
想定どおりに行けば、赤線の弾道を描いて赤丸地点に命中します。

しかし、そうそう上手くは行かない。

砲弾は飛翔中に大気や風の影響を受けブレます。その結果、おおよそピンクの範囲のどこかに着弾します。
当たるかもしれないし当たらないかもしれない。少なくとも狙ったピンポイントの位置にあたるという事は期待できない。
このように、一点を狙ってもある程度の範囲のどこかに着弾してしまいます。これを散布界と言います。

大口径の砲ほど散布界が広くなります。
歩兵が持てる小口径のスナイパーライフルだと散布界は狭い。ただ、さすがにその程度では防弾ガラスを撃ちぬけないでしょう。
ゾイドの砲はキャノピーをなんなく撃ちぬける。でも、その代わりに大口径である。つまり散布界がある程度広いと思われる。

さて、分かりやすくするために戦車の話をします。
共和国ゾイドを見て「キャノピーなんていう分かりやすい弱点をつけておくのはおかしい」と考えるのは早計です。
戦車は高い防御力を誇りますが、共和国ゾイドと同様に分かりやすい弱点があります。
それはキャタピラです。


キャタピラは何枚もの鉄板を繋いだ構造をしている。鉄板自体は強固です。ですが、構造上どうしても繋ぎ目が切れやすい。
長距離を走行させると、それだけで切れてしまう事もある位に弱い。
もちろん被弾など仕様ものなら一発でアウト。キャタピラが外れた戦車はもはや動く事ができず、その後は的にしかならない。
と考えると、キャタピラを狙えばいいじゃないかという話になります。

むろん当たれば一発でアウトになります。ただ散布界の話を思い出してください。
キャタピラを狙うと下図の様になります。


これでは命中率が下がりすぎる。
当たらなければ意味がない。
必然的に、中央部を狙って撃つ事になります。


こうしなければ高い命中率は見込めないのであります。
また、ここでは散布界から命中率を語っていますが、戦場では制止した敵を撃つわけではない。敵も常に動いているのだから、撃つ時は現在位置ではなく未来位置を予測してその位置に撃つ必要がある。
更に、惑星は自転しているから長距離射撃をする際はその誤差も修正する必要がある。
まぁ、色々と難しいのです。中央を狙って撃つのが妥当になります。

さてゾイドに置き換えよう。
初期の「戦闘用」ゾイドと言えばガリウス。そして共和国が後に投入したのはゴドスやゴジュラス。いずれも高い位置にコックピットがあります。
(「戦闘用」の語は強調して書いています。例えばハイドッカーは輸送や支援用である。そのように各ゾイドには様々な目的がある。その中で純粋に「戦闘用」として開発されているゾイドとして捉えてください)


帝国としては「キャノピーを撃てば一発で倒せる」と理解しつつも、散布界の事情からそうはできない。中央部を狙わざるを得ない事情があったのだと分かります。
共和国側から考えれば、キャノピーは弱いがそうそう当たるものではない=致命的な弱点ではないと言えます。

同様の事は帝国機にも言えまいか。
もちろん言えます。
例えばマーダの頭部は前方に突き出している。


だからここを狙っても散布界の問題からよろしくない。当たらない。
やはり中央を狙わざるを得ない。そう考えると、帝国ゾイドもキャノピー式であっても構わなかったと思えます。
しかし、これは共和国ゾイドのラインナップを見れば分かります。

共和国の「戦闘用」ゾイドは、いずれも背が高い。ゴドスやゴジュラスだけでなく、ビガザウロやマンモスも帝国小型ゾイドに比べればはるかに背が高い。
高いというのは重要です。
なぜなら、「撃つ」事を考えれば、「低い位置から見上げて撃つか」「高い位置から見下ろして撃つか」 どちらが撃ちやすいか、命中率が良いかは明らかです。
見下ろす方が撃ちやすいし当てやすい。

また、共和国軍にはペガサロスという対地攻撃が可能なゾイドもいた。
当時の共和国軍のゾイドは、帝国ゾイドを「高い位置から狙い撃てる」ようなラインナップであった。
すなわち、「自身はコックピット部分に被弾しにくいが、敵のコックピットを狙うのは比較的容易」という極めて有利な立場にあったと言えます。
特にゴジュラスはキャノピー式であっても全く問題ない。マーダに乗ってゴジュラスのコックピットを撃つ事を想像すれば、それがいかに困難かが分かる。

おそらく、それゆえ共和国側はキャノピー式で構わなかった。帝国側はコックピットの安全が急務となり装甲化を急いだという事情があったと推測します。
この必要が両国のゾイドのコックピットの処理を別れさせたと思いました。

帝国軍は早期から「ゴジュラスの高さから撃たれる」事を想定してゾイドを開発せざるを得なかった。だから装甲化が進んだ。
一方、共和国軍は「レッドホーン程度の高さを想定しておけば良い」という事情ゆえキャノピー式が中心となり後々まで引き継がれた。

ただし、共和国軍に衝撃が訪れたのはデスザウラーでしょう。ゴジュラス並の高さを持ち、しかも頭部に砲があるから上から容易に撃たれる。
今まで共和国軍のお家芸だった「上から撃つ」事を、ついに帝国側もやってのけた瞬間です。
それゆえ、以降は共和国ゾイドにもコックピットの防弾が次第に求められるようになった。そして装甲化が進んでいったのであった…。

デスザウラーについても少し。
デスザウラーはキャノピー……と呼んでいいのかどうかは分かりませんが、装甲式ではないコックピットをしています。
これは一見して不思議な事ですが、今回の説から考えるなら「上から撃たれる事がない」ので、過度に重装甲にする必要は無かったという事でしょう。

キャノピーの事情をこのように考えると面白いと思います。


さて、もう少しだけ余談です。
共和国ゾイドは必ずしもキャノピー式にする必須が無く、それゆえ技術の発展が遅れたと推測しました。
ただし、それはゴドスやゴジュラス等の純粋な「戦闘用」ゾイドにおいての話です。
ゴルドスやカノントータスのような機体には、できることなら装甲化を進めてあげて欲しい所。
共和国ゾイドであっても、コックピット位置が低い機もあります。

多分、現場としては「せめてもう少し防弾を…。俺たちはゴジュラスと違って撃たれるんだ」という声があった事でしょう。
しかし軍部の判断は、主力戦闘ゾイドを是とする方針があったんじゃないかなあと思います。
それゆえ全体的に「キャノピーで構わない」という風潮がまかり通り、後年まで装甲化が見送られたのだと思いました。

それでも、やはり防弾を求める声を全く無視する事もできない。
それゆえ共和国の開発メーカーの中には独自に「より強度の高い超超防弾ガラス」の開発に死力を尽くし、後年の24ゾイドのクリアー装甲を開発させたのかなと思いました。
共和国24ゾイドの造形はクリア装甲で覆う異様な姿。
設定として高い防弾性をもつようですが、この透明でありながら脅威の防弾性を持つ装備は共和国軍のキャノピーの事情ゆえと考えると面白いです。
ただ、この防弾性を高めたクリアー装甲でも完全な装甲式に比べれば強度は劣る。
それゆえ後年は装甲式にとって代わられたと推測してみても面白いと思います。

そんなわけで今日はキャノピーの話でした。
ところで、「散布界」の話を出しました。これは上記では実弾砲を想定して書いています。
ゾイド界には実弾砲の他にビーム砲もあります。ビーム砲の散布界にも触れる必要があると思います。
それについては近日中に現時点でのまとめを書きたいと思っています。
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