奇跡の一戦

今日は先日のレビューでも触れた、ゾイドマンモスが出した奇跡の一戦、雪原でデスザウラーを撃退したエピソードについてです。



これはバトスト全期を通しても特に印象深いものでした。
本当、戦力差を考えれば本来はありえない。そういう事をやってのけた当時の展開は凄い!!

さて今回はなぜこんな旧式機にスポットが当たる胸熱エピソードが生まれたか。そのことについて私が考えたところを語ります。
私はこれは学年誌で展開していたからだと考えます。
いや学年誌だから、というのは語弊があります。より正確に言うと、「掲載誌が年代を追うごとに増えていった」からです。

学年誌のうち、小三は84年からゾイドを掲載。小一と小五は86年からゾイドを連載しています。
より詳しく言うと、小三はゴジュラスが発売した直後くらいから。小一と小五はゴジュラスVSコングによってゾイドブームが拡大してきた頃からの連載ですね。
比較的初期から掲載していたのは一、三、五。

対して二、四は88年からようやく連載するようになりました。
88年というと、前年の年末商戦アイテム「デスザウラー」によってゾイドブームが最高潮に達した頃です。
二、四はかなり遅れてから連載を始めた感じですね。

小六は…、かなり初期から連載していいましたが、「不定期」でした。

学年誌の状況の以上を前提としてご確認下さい。
これは重要です。


さて件のデスザウラーVSゾイドマンモスの一戦ですが、これは「小二」の「88年3月号」に載りました。

小二は88年2月号からゾイドバトルストーリーの連載をはじめました。
状況を想像して下さい。
学年誌は自分と同じ学年を買うのが基本です。その学年である期間は「4月から翌年3月まで」ですね。

「小二の88年2月号からゾイドバトルストーリーが始まった」
言い換えれば「前年4月号から1月号まではゾイドバトルストーリーが掲載されていない」
ではどうするかというと、いきなり始めたんじゃ読者が「?」になってしまう。
まずは「ゾイド全体の説明」のような所から始める必要があったわけです。

当時の状況をいまいちど整理すると、ゾイドブームが過熱していた時期なので当時の少年はゾイドは「何となく」知っていたというような状況であった。
とはいえ具体的な詳細は知らない。だって今まで連載がなかったから。

そんな状況で始まったのが小二のゾイドバトルストーリーです。
ここにゾイドマンモスが登場&活躍した秘密があります。


小二のストーリー……、88年2月号を紹介。
これはゾイドバトルストーリー3巻の「デスザウラー鹵獲作戦失敗」のエピソードにもなっています。





帝国軍は最強ゾイド「デスザウラー」によって戦いを優位に進めている。共和国軍は、どうにかして仕留めるべく総攻撃に出た。
共和国最速機「シールドライガー」がデスザウラーを監視しチャンスを報告した。
そして飛行ゾイド「サラマンダー」と共和国最強の砲撃機「ウルトラザウルス」が出撃した。
デスザウラーは背中に唯一の弱点「オーロラインテークファン」を持っている。
サラマンダーがデスザウラーと戦い隙を作る。そしてウルトラザウルスがキャノン砲を打ち込む作戦だ。
だがキャノン砲は命中しなかった。本体には当たったが、ファンをわずかに逸れた位置だったのだ。
危機を脱したデスザウラーは怒りの反撃を開始した。荷電粒子砲でサラマンダーが木っ端微塵に吹き飛ぶ。
共和国軍の作戦は完全に失敗した…。

これは極めて優れたエピソードです。
帝国軍にとんでもない強さを持つデスザウラーが居る。それはもう共和国軍が総攻撃しても倒せない位に強い。
連載最初の話としてデスザウラーの強さをこれ程かと見せ付けています。そしてまた最強ゾイドにも背中のファンという弱点があると語っているのも良い。

さて共和国側ですが、一つのエピソードの中に多くのゾイドが登場しますね。
シールドライガー、ウルトラザウルス、サラマンダー。
これはやっぱり連載最初なので、「できるだけ多くのゾイドを紹介しなければならない」という宿命があったからでしょう。
それが見事に達成されています。速度のシールド。飛行のサラマンダー。砲撃のウルトラ。
各機の特徴や役割分担を描いているのは見事です。


さて続く88年3月号はこちら。
こちらもやはりゾイドバトルストーリー3巻の「帝国北部基地攻略戦」のエピソードになっています。







帝国基地に共和国軍が攻撃をかけた。
アイアンコングが守る基地をベアファイター、スネークスが襲う。
共和国軍は軽攻撃をかけながら基地を包囲する作戦に出た。
戦いが長引くと、帝国基地は食料、燃料、弾薬が不足してきた。そこでサイカーチスを使って空から補給を試みたが、これは改造カノントータスが撃墜した。
困窮した帝国機地は、もはや切り札・デスザウラーを呼び寄せるしかないという結論に達した。
高速を誇る「サーベルタイガー」を中心とした部隊が決死の覚悟で包囲網を突破。帝国指令本部に行きデスザウラーを呼び寄せた。
だが救援に向かったデスザウラーは極寒地で思うような性能を出せない。そのうえ改造マンモスの群れによる一斉攻撃を受け、ついに撤退に追い込まれた。
デスザウラーの増援を阻止した翌日、共和国軍は満を持して総攻撃を開始した。
ウルトラザウルスが基地に突入。こうして帝国機地は陥落した。


これも良いエピソードですね。
まず前号は「強い大型ゾイドを大紹介」みたいな所が強かったのですが、今回は小~中型ゾイドの活躍も多く描いています。
更に前号は全機ともキット素組み状態で登場しましたが、今回は「改造」が登場しているところも見逃せない。

登場するゾイドの種類はやっぱり多い。
連載が始まった最初の頃だから、やっぱり一機でも多くゾイドを登場させて紹介したいという意図があったのでしょう。

さてこの時期、ゾイドマンモスは店頭在庫はまだあるような状態でした。
なので登場する事ができたのでしょう。

いまさらゾイドマンモスを出すなんて、既に以前よりゾイドを連載している小一や小三ではありえない。
そちらでは最新ゾイドのアピールに注力した方が良いに決まっている。
でも今連載を始めたところの小二は違う。ちょっと古くてもいい。一機でも多くゾイドを紹介して「たくさんのゾイドが存在するゾイドワールド」の深さを知ってもらわなくちゃいけない。
そんな事情でゾイドマンモスが登場したのですね。

またこの頃のゾイドはリアル系なミリタリー描写を加速させていました。
チビッコが即座にビビッとくするのは「このゾイドが最強!!」というような分かりやすいアピールでしょう。それは必須です。
一方でこの時期のゾイドが目指していた、「最強ゾイドが一機いるだけではどうしようもない」ようなリアル感。これもバランスよく伝える必要がありました。

なので前号では共和国軍が総攻撃しても倒せない最強of最強のデスザウラーを描写し、今号では「そんなデスザウラーでも行動できない地帯がある事」「集団戦法の強み」「改造による特化」のような描写をしたのでしょう。
段階を踏んで伝えている感じが良い。

あと、この号ではウルトラザウルスが活躍しているのも注目ですね。
前号では狙うを外す失態をしたウルトラザウルス。いやしかし何といっても共和国最強ゾイドだし「前号では失敗したけど実際は凄く強いんだよ」というアピールをする必要がある。


こうして小二の少年はゾイドの世界観を学んでいったのであった…。
さて翌月は88年4月号。学年があがる。すなわち購読するのは小三の4月号になりますね。もちろんゾイドが掲載されています。
小ニが88年2月号という「なぜここから?」という半端な時期に連載を開始したのは、「2、3月号でゾイド世界観や機体を紹介して」「そうしてから小三のバトストを読んで欲しい」という意図があったのだと思います。

もう少し捕捉します。
2、3月号でほとんどの共和国大型ゾイドは登場しています。
ゾイドマンモス、サラマンダー、ウルトラザウルス、シールドライガーですね。
未登場なのはビガザウロ、ゴルドス、ゴジュラスです。これらはなぜ登場しなかったか。

まずビガザウロは出荷停止して久しいゾイドで、もはや店頭在庫もなくなっていたような状況です。なので出なかったのは当然でしょう。
ゴルドスは玩具はマンモスと似たような状況でした。ですが大きく異なる点として、この時期には後継機「ゴルヘックス」が登場していた事が挙げられます。
105mmキャノン砲を使った火力支援→ウルトラザウルスの方がいい。
レーダーを使った電子戦機としての描写→ゴルヘックスの方がいい。
そこで出番を失したと思います。

ゴジュラスはなー・・・・・・。ゴジュラスはなぜ登場しなかったのでしょう。
これは思うに、それまでのゴジュラス猛プッシュの反動じゃないかな。84~86年のゴジュラス猛プッシュは凄まじかった。デスザウラーにやられるまで、まさに強いゾイドとして貫禄を見せ付けていました。
ゾイドといったらゴジュラス。当時はもうゾイドを知っている=ゴジュラスを知っている感じだったので、あえて紹介しなくても知っている前提だったのかもしれない。
あとは……、やっぱりデスザウラーを撃退するシーンは「ゴジュラスではダメだ」という判断はあったのかもしれないなぁ……。
同タイプのゾイドだから、その強さの印象は慎重にしなきゃいけない。
「デスザウラーはゴジュラスを大きく超えたゾイドだ。だから間違ってもゴジュラスがデスザウラーを倒す描写はダメ」と徹底されていたのかも。


この時のゾイドマンモスは幸運でした。
かつては「戦闘用という役割がかぶったからゴジュラスが優先された」経緯がありましたが、今回はゴジュラスが使えなかった。
また寒冷地用のイメージがあった事も良かった。それが奇跡のカムバック、そして最後の活躍になったと思います。

ちなみに…この翌月には新型ゾイド「ディバイソン」が誕生しています。
もし掲載が一ヶ月遅れていれば、このシーンはディバイソンに取って代わられていたでしょう。
まさに奇跡のタイミングでした。

ゾイドマンモス奇跡の活躍にはそんな雑誌掲載の事情がありました。
この事情を知ると更に面白い感じがしますね。
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