ルイーズ大統領の憂鬱

同人誌の製作にあたって厄介なのは、やはり各媒体で描写が違っている事です。
機獣新世紀ゾイドはメカ生体ゾイドの初期ほどは乖離していないんですが(メカ生体初期の各媒体での違いはかなり凄い…)、それでもやっぱり幾らかの乖離はあります。

その中でも最大はルイーズ大統領の生死でしょう。
ネオゼネバス帝国に囲まれ絶体絶命の中、セイバリオンで脱出。この時、
・コロコロだと生還し「これは新たな戦いの始まりなのです」と宣言
・公式ファンブック4巻だと「落伍し行方不明」

となっています。




公式ファンブックが「あとから一冊の本としてまとめ上げたもの」なので正しいと解釈すべきな気はします。
いやしかし、そうはいってもコロコロの記事だって尊重したいと同じくらい思います。

ちなみになんでこんな事になったかというと、「ルイーズ大統領脱出を機にコロコロにバトストが載らなくなったから」だと思います。
代わって載るようになったのはブロックス特集です。
ブロックスはめちゃくちゃ売れて低迷気味だったゾイドを見事に復活させました。

展開には「売れてるものを更に売る」パターンと「売れてないものを補強する」パターンがあって、この時は前者が使われたようですね。
とにかくブロックスは超プッシュされ、かわりに動力キットはおざなりになってしまっていた。

当初ブロックスは「ブロックス独自の世界」として扱われました。バトストとは別の世界軸です。
だから「ブロックスの特集記事が載る=バトストが載らない」となってしまったわけですね、、、、。

しばらくしてブロックスの世界はバトストに組み込まれます。
そしてまた散発的にではありますがバトストも再開されました。ですが本当に散発だった。ゴジュラスギガやセイスモサウルスが発売された号だけ載るという感じ。
他の号には載らない。やはりブロックスの組み換え作例 という状態でした。


さてルイーズ大統領ですが、コロコロだと生還し「ここから新たな戦いが始まる」と宣言してる。
またこのシーンをもって「第一部-完-」となっています。



おそらくこの段階では……、少しの休止期間を挟みつつも数号後には「ブロックスと半々」程度でバトストを再開する予定だったんじゃないかなぁ……と思います。

だがブロックスが予想をはるかに超える大反響を得た。
そんなわけでバトスト再開は延び延びになり、散発的な掲載に留まるようになり……となったのだと思いました。


結局、第二部にあたる時期(共和国VSネオゼネバス帝国)は「一部ゾイドの説明書」や「公式ファンブックEX」で展開する事になった。

正直、これらを全てかき集めても写真が少なすぎるので「公式ファンブック5」を作る事は難しいと言わざるを得ません。
作るならかなりの数の新規撮影が必要でしょう。

「公式ファンブック4」を作る段階で、既に「公式ファンブック5を作るのは難しい……」となっていたんじゃないかなぁ。
ならば、「公式ファンブック4」を綺麗な形で作りたい。
やはり「死者からのメッセージ」というのはぐっとくる。そういうわけで、編集側の都合に振り回されてルイーズ大統領は落伍してしまったのかも……。


さて私はどういう解釈をしているかですが、ルイーズ大統領は脱出に成功したと思っています。
つまりコロコロ版です。ただし公式ファンブックの記述も取り入れ「その後は隠居した」と考えました。
「生きているが表世界からは姿を消した」という事ですね。

何で隠居したのか。
ルイーズ大統領は「自分では最善の選択をしたつもりなのに戦火拡大で悲劇ばかり起きてる……。もはやムーロア一族が指揮をとるべきじゃない」と考え仏門にでも入ったんじゃないかなぁ……。
責任放棄とも言えますが、まぁ……、気持ちは分かるなぁ。


ルイーズ大統領ですが、バトストでは割と善政をしく良識ある尊敬すべき人と描かれていたと思います。
でも全体を見ていると、私はけっこうミスってるなあと思うようになりました。

国はもちろん自国が最優先なので、他国と対立するのは仕方がない事です。
しかしだからこそ、対立が深刻化しないように、また戦争が起こらないように務めることが求められます。
戦争はなんとしても回避せねばならん。
それを思うと、開戦した時点で申し訳ないのだけどミスがあったと言わざるを得ないと私は思います。

ヘリック共和国は第二次大陸間戦争で領土を大きく失いボロボロになった。
戦争によって大きな損をした。
結果論ではあるが、この点からも開戦すべきでなかったと言えます。

では開戦を回避するチャンスはあったかというと、二回あったと思います。
ルイーズ大統領は、ぜひとも戦争回避に死力すべきだった。


ひとつは「会戦前」です。
プイツェンが「開戦のチャンスを常にうかがっていたので開戦は不可避だった」と言われそうですが、私はこれは否と思います。

ルイーズ大統領について私は軍事力への理解があまりないのかなぁと思っています。
軍事力の極めて重要な意義として「抑止力」があります。
要するに「勝てない相手にゃケンカを売らない」
彼女はこれを知らないと思う。

「プロイツェンは帝国軍を掌握していた」とはいえ、それは彼の手腕が素晴らしかったからでしょう。
無能だったり無茶苦茶を言ったりすれば、そりゃあトップから外される。
プロイツェンは「高い支持を得てトップになっていた」のです。
逆に言えば今の地位を維持したければ無茶な事はできない。
共和国に勝てない軍事力で「今こそ開戦すべきでしょう!!」とか言おうものなら、即座に地位を失う。

帝国は軍事力を過度に増大させた。
そして「これは勝てる」と思ったので開戦に踏み切った。
それはプロイツェンの思惑であったが、全軍の支持でもあったのです。

共和国が開戦を回避しようと思えば、帝国に「勝てる確証がない…」と思わせる程度には軍事力を持つべきだったという事です。
帝国軍全体がそういう認識を持っていたなら、たとえプロイツェンが開戦を望んでいたとしても簡単にはできない。

多分、復興や民の暮らし安定を優先していたのでしょう。
それは人道的見地から素晴らしい政策と言える。

ただしあまりにも性善説(※)に頼ったあやうい政策だったと思います。
国と国のリアルな部分……、「隙を見せれば攻めてくる」という危機感を常に持つべきだったと思います。

※人の本性は善であるという考えで使用している(言葉の本来の意味からいえば誤用ですが)



でもまぁ……、「第二次大陸間戦争の開戦を回避できなかった」のはまだ良いと思うんです。
プロイツェンが居たから、確かに開戦は必然だったかもしれない。

明らかに劣る戦力でも開戦する場合はあるんです。大日本帝国って言うんですが。
勝てない事は分かりきっていた。
でもそれなりの戦力ではあった。
だから「全力で攻めれば半年くらいなら優勢を保てる」「つまり短期間のうちに大戦果を挙げて講和に持ち込めば我が方に優位な条約を結べるかもしれん(つまり戦勝)」という考えで開戦を決意してしまった。
後の時代の人が客観的に分析するなら「バカか」と思える事案でも、その時代の人は雰囲気に流されてしまう場合もある…。

そんなわけで、第二次大陸間戦争の開戦を阻止できなかったのは……、まぁ仕方がなかったかもしれない。
どちらかというとあれは「防衛」だし。


でも次に挙げる項目は絶対的な失策だったと思います。
次に戦争を回避するチャンスは「西方大陸戦争戦勝後」です。

西方大陸戦争で、共和国軍は緒戦こそ苦戦した。
だが第二次全面会戦以降は圧勝。ロブ基地に迫る帝国精鋭を撃破し、補給の伸びきった帝国軍を蹴散らしながら一気にニクシー基地を攻略した。
ジェノブレイカーやデススティンガーの活躍でわずかな混乱はあったものの、このときの共和国軍の勢いって凄まじかった。

ZAC2099年8月開戦。ZAC2100年7月第二次全面会戦。
共和国軍は凄いなぁ…。極めて劣る戦力ながら、粘りに粘って開戦から約一年を耐えた。
崩壊しなかった。

じゃあ帝国はどうだ。
ニクシー基地が攻略されたのはいつだ。
ZAC2100年10月だ。
第二次全面開戦からわずか3ヶ月で帝国軍は負けてる……。

昔から「不利な時にも既存戦力を効果的に使う戦線を建て直し粘る共和国軍」「一度破綻すると一気にこけてしまい戦線を容易に崩壊させる帝国軍」の伝統がありましたが、ここでもその差が出てしまった気がする。
まぁ、この戦いの考察は今回は省略します。
とにかく共和国は勝った。

ここでルイーズ大統領が採った方針は「停戦勧告」
そしてそれが無視されたら、次の強烈な演説を行い共和国国民の戦意を高揚させた。

「停戦勧告は無駄でした。我々には今、ふたつの道があります。ガイロス帝国に時間を与え、再び祖国が危機に見舞われる日をじっと待つか。それとも敵本土に乗りこみ、戦争の元凶たる帝国摂政ギュンター・プロイツェンを討つかです」

この演説って、ルイーズ大統領はめちゃくちゃ熱くなっていたんだろうなあ……と思います。
私は思うのだけど、そのどちらでもない最良の方法があった。
それは「軍事力を帝国以上にして攻め込まれないようにする」です。

公式ファンブック2巻にはこうある。
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ガイロス帝国軍司令部は、すでに西方大陸戦争の先を見ていた。中央大陸、ヘリック共和国本土への侵攻作戦である。
40数年前の異変からの再建に力を注いできた共和国は、経済力、工業力とも帝国をはるかに上回る。
この力が戦争に向けられる前に、共和国の中枢を叩くことが、帝国の大戦略だ。そのためには、敵本土においても戦いを一気に終結させうる新型ゾイドの開発が必要だったのだ。 
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つまり帝国軍は「短期戦以外に勝つ術はない」と認識しているのだ。

共和国軍は暗黒大陸に攻めいる事などせず(しかも中央大陸を空にしてまで!)、中央大陸の防衛に戦力を増強させれば帝国の侵攻意図をくじけたでしょう。
「短期戦以外に勝つ術はない」と認識していた帝国軍です。共和国軍が全力で軍事力増強を始めたなら「機会を損失した……」と判断するでしょう。
また仮に、ヤケになって攻め込んできても撃退できたと思います。

帝国には「物量など物ともしない反則級のゾイド」が居た。デスザウラーです。
なので「デスザウラーが完全復活・量産される前に叩く必要があった」のかなぁ……とも思いました。
しかし共和国は既にマッドサンダー復活計画を進めていた。なので「デスザウラーが復活したところで大丈夫」という考えにもなりましょう。

マッドサンダーの「幼い個体を使ったので若干の弱体化をしていた」という設定も見逃せません。
これって急いで戦ったからこうなったんじゃないかなぁ……。
「とりあえず暗黒大陸に攻め入るのは待っておこう」としておけば、上手くいけば数年が経過し完全なマッドサンダーが復活していたかも。
そうなればもう守りは磐石。

ルイーズ大統領は「第二次大陸間戦争開戦を回避できなかった」この事から強く学ぶべきだった。
「抑止力、または開戦したら拒否抵抗能力(防衛力)として使う」ために軍事力を帝国以上にすべきだったと思います。
そうすれば西方大陸戦争で戦いは終わっていたでしょう。
敵がヤケになって攻め込んだとしても、キチンと防衛できるのであそこまでずたずたにはならなかったでしょう。

ルイーズ大統領の人柄を疑うわけではありませんが、西方大陸戦争戦勝後は「ムーロア一族の血」が騒いじゃったんじゃないかなぁ。
血で血を洗う一族の宿命が勢い余ってあのような演説をしてしまった。国民は沸騰しもはや暗黒大陸上陸以外に採るべき道がなくなった。
そして戦況が決定的にやばくなった時、ふと冷静になって悟る…。
「ムーロア一族がトップに立つと絶対に争いが絶えない………」と思ってしまい、表舞台から引退したんじゃないかなぁ……。


ヘリック大統領は理想主義者であったが同時に結構冷酷で、現実的な判断も下していると思う。
国のトップとしてはとても優秀だと思います。
ルイーズ大統領は……、残念ながらそこには至っていない気がするなぁ。「理想の為には現実的な力も必要」という部分をもっと意識していれば。

もっとも彼女は16歳(第一次大陸間戦争開始時/ZAC2051)の頃のプロフィールは「わがまま・勝気なプリンセス」だったので、この時点では政治的な教育はあまり受けていないと思われる。

というか彼女はゼネバスの娘の筈なんですが、バトストを読むとゼネバスは「身内が誰もおらん……」みたいに嘆いているんですよね。
おい。

ただこの発言は「後継者がいない」という意味が含まれているんじゃないかな。
女性であるエレナはゼネバスの娘ながら後継者とははなから見なされていなかった。それゆえ身内相応の豪華な生活はさせつつも政治的な教育はほとんどしなかった……のだと思われる。

大陸間戦争はZAC2051-2056年まで続いたので、グランドカタストロフ時点でエレナは21歳くらいか……。
リバセンによるとこの後ヘリック共和国に救助され……という流れ。

そしてこの後共和国大統領に就任するわけですが、不幸だったのは幼少の頃より政治を叩き込まれなかった事だと思うなぁ。
21歳というと価値観もある程度固まっている年齢です。

彼女は救助されてから、たぶんヘリック大統領に後継者候補とされて政治を学ぶ機会を与えられたと思う。
血筋ゆえか、彼女はそれをぐんぐん吸収し良い政治家になる。
ただし、教育を始めたのが21歳という価値観が固まった時期以降であった。だからどうしても、学ぶ際にはバイアスがかかってしまった。

救助された時期のエレナはどういう心境だっただろう……というと、「戦争で祖国(ゼネバス帝国)が滅んだ」「亡命先の国では父は幽閉されてた」「グランドカタストロフで父が死んだし星はめちゃくちゃ」という凄まじい具合。
最後のは戦争が原因ではない……とはいえ「戦争なんてしてる場合じゃなかった」という強い印象にはなったでしょう。

ゼネバス帝国が健在だった時期もなぁ……。徐々に戦況が悪くなりマッドサンダー以降は猛攻されどんどんヤバくなる祖国。そんな中で過ごした印象も強烈だったでしょう。
思春期の年齢をこんな激動で過ごしたんだから、もう凄まじい…。

彼女の年表を作ってみよう。
ZAC2051年に16歳という所から逆算すると正確な年表が作れる。
(※以前にも作ったことがあるんですがミスがあったり情報が薄かったりしたので完全版を作った)

(色は優勢な国を表す)

こりゃあ大変だ……。
戦争に振り回されっぱなし。
そりゃあ「軍隊があるからいけないんだ!!」となってしまってもおかしくはない気はします。
ヘリックは自身の後任としてエレナを育てたと思います。その中でエレナは軍の必要性も学んだと思いますが、やはり根底には「軍事力は良くないものである」という意識が消えなかったんじゃないかなぁ…。

ルイーズ大統領に対してはそんな風に思いました。
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