両軍のバランスを崩壊させた要素

昨日の記事の続きです。

軍事力が弱ければ侵略され国を失う危険性が高い。
国・軍とは、たとえ交戦状態でなくとも、常に仮想敵を置き敵軍とのミリタリーバランスを考えるものである。
休戦期間中の共和国と帝国も、常に敵軍の軍事力を探り対等ないし上に立とうとしていたはず……。

結果から言えば、西方大陸戦争開戦時の戦力は帝国軍が圧倒的に上回っていた。
共和国軍は、なぜ帝国軍に比べて格段に劣る軍事力しか持てなかったのだろう。
いかに復興を優先していたとはいえ、ここまでの開きを付けられてしまったのは落ち度と言われそうな気がする。

今回はこれを考えます。
さてこの疑問をを考えた時、帝国は情報戦で勝利したんだろう、と思いました。


現在の地球では、各国兵器を調べると割と正確なスペックや開発状況の詳細がすぐに出てきます。
むろんその情報が正解かは分からないんですが、冷戦期に比べると格段に情報が得られるようになりました。

冷戦期のアメリカはソ連軍の兵器の情報を必死で探っていたものの、かなり間違った把握もしていました。
当時のソ連機の写真なんて不鮮明なものばかりだからなぁ…。
米国はMig-25、Yak-38なんかはかなり過大評価していたし、逆にMig-23なんかは過小評価していた。

太平洋戦争緒戦で活躍した「零戦」も当初は「ジャップにそんなの作れるわけねーだろ」と言って過小評価されていた(そして実際に交戦してびっくり)。

日本艦の多くはスペックを控えめにして公表されていた。その中には敵に暴かれたものもあるし、秘密のまま騙し通せたものもある……。

軍事力はある程度は予算で決まります。
敵が強ければ多くの予算が出て装備は強化される。
敵が弱ければ予算は縮小され装備は据え置きや削減となる。

従って敵がどういう装備を持っているか、どういう規模かという正しい情報を掴むのは極めて大事。
軍事で優位に立つとは、情報戦を如何に征するかでもある……。


上のMig-25や零戦は過大評価や過小評価の例です。
これらは正しい情報が掴めていない例ですが、もっと大胆な例もあります。

そもそも「そんな兵器は持っていませんよ」として、存在そのものを明かさない場合もあります。
いくつか例を出しましょう。

戦前、日本海軍は大型優秀客船の建造を推奨し、建造費の一部を負担していました。


これはそんな風に建造された客船の「新田丸」

なぜかというと、「建造費を補助します。その代わりに有事の際は海軍が買い取り軍艦に改造しますよ」という取り決めがあった為。
上の新田丸は航空母艦「冲鷹」に生まれ変わっています。


軍艦は多く持ちたい。特に空母のような艦は増やしたい。
しかし、平時において多く保有すると他国を不要に刺激する。そこで客船を隠れ蓑にして”潜在的な軍艦”を増やしたのであります。

次。


ドイツ軍は第一次大戦で敗戦し戦車の開発を禁止されます。
しかし、「農業用トラクター」の名称で軽戦車を開発しています。 
この時に完成した戦車は小型弱小でしたが(さすがにトラクターを隠れ蓑にして開発できる規模には限界がある)、ここで基礎を得たドイツ軍は後にとんでもなく強い戦車を開発することになる……。

次。


これは戦艦比叡。
この戦艦は軍縮時代において「装甲の撤去」「主砲の一部撤去」「機関の低出力化」の改装をして練習戦艦になっています。
(写真は練習戦艦時代のもの)

練習戦艦時のスペックは、遅いし防御力は皆無だし砲力も半減。
もはや戦力としてまるで期待できない。

なぜこんなことをしたかというと、軍縮条約で各国の戦艦保有量の上限が設けられたから。
日本は上限を超えており、一隻を廃艦にする必要があった。
しかしそれは嫌だということで、「戦力外の練習艦にする」という事で保有を認めてもらった。
この艦が条約失効と同時に直ちに再改装して戦艦に復帰したのは当たり前であった。

「戦力がそもそもないですよ」と偽る例を紹介しました。
軍は少しでも戦力を持つために、そして隠すために全力を尽くすという事ですね。


さて帝国軍についてですが、復興のキーワードをゴリラ型ゾイドと考えました。
そして軍の規模を誤魔化す情報戦に勝利した理由もゴリラ型ゾイドだと思いました。



休戦期間の状況や両国の思惑を妄想します。

1:帝国軍は残存するほぼ全てのゴリラ型ゾイド(特にアイアンコング)を復興仕様に改造した。また新造するゴリラ型ゾイドの全ても復興仕様として生産した。
-補足-
仕様は将来的に軍用に戻す事を見据えた設計であった。
しかし外観上はもはや軍用にできないと思える程、徹底して復興仕様にしていた。
(これは共和国軍を誤魔化す為に外観をそのようにしたのである)

共和国軍は「将来的に軍用に戻す」事を予想しつつも、「あれだけ徹底した復興仕様だから、軍用に戻すとしてもかなりの費用や時間がかかるであろう」と予想した。

2:1により、共和国軍は帝国軍の戦力を「軍用ゾイドとしてのアイアンコングは少ない」と判断した
-補足-
共和国軍のアイアンコングや帝国軍戦力に対する認識詳細は以下の通りである。

むろん将来的には多数のアイアンコングが軍用として配備されるであろう。が、それはかなり先であろう。
現在の帝国軍大型ゾイドはレッドホーンとサーベルタイガー(※)が中心で、それに加えて小数のアイアンコングは居る程度である。
※この時点での共和国軍はタイガーが”セイバー”として圧倒的向上をしている事は知らない


共和国軍はゴルドス、シールドライガー、ディバイソン、ゴジュラス(少数)を保有する。
この構成なら現在の帝国軍に対抗するには充分であろう。

共和国軍はまた、マッドサンダーの幼体20機程度が順調に育つ状況であった。
信頼に足る情報から、ギルベイダーやデスザウラーは既に死滅していると判明している(この時点ではオーガノイド技術による復活計画は知れていない)。
帝国軍は将来的にコングを増産するだろう。しかしこっちだってマッドサンダーを配備する。
昔ほど数をそろえることは出来ないが、アイアンコングを抑えるには充分すぎる戦力だ。

主力歩兵ゾイドはイグアンを有する帝国にゴドスでは不安があった。
飛行ゾイドでもレドラーを有する帝国にプテラスでは不安があった。
しかし共に、近い将来に解消できる見込みもあった。
共和国はアロザウラー、レイノス、サラマンダーの野生体保護政策を行っていた。
近い将来にこれらが充分な数に回復し、再び主力配備できる予想があった。

3:帝国はまずニクスを復興し、その完了と同時に「次はトュルクも復興する」と宣言した。これにより共和国は「ガイロス帝国の復興はまだまだ続く。つまりアイアンコングの軍用化もだいぶ先であろう」と判断した
-補足-
実際はトュルクを放棄しニクスに集中する大胆すぎる策を採ったガイロス帝国。
共和国からすれば、広大な面積のトュルクを放棄するなど露ほども思わなかった。
これは当然である。いくら寒冷地(シベリアのような感じだろうか?)といっても、広大な国土を放棄するなど……。

しかし、これこそが帝国軍の秘策であった。
「これからも復興は続く」「アイアンコングを軍用にするには多くの費用と時間がかかる」と思わせたことで、共和国軍は予算を増やさなかった。
帝国軍としては「よしよし共和国めまんまと騙されおったわ」というところ。

ニクス復興を終え、トュルクに移動するゴリラ型ゾイドたち。
しかしそれらは復興の為ではなかった。
一斉に軍用の改造を受けるゴリラ型ゾイド。特にアイアンコング。
それは極めて短期間のうちに済んだ。

こうして膨大なアイアンコングが帝国軍に加わり、一気に戦力は増した。
アイアンコングを加えた帝国軍は、すぐさま行動を開始した……。


両軍の大きくに開いた戦力差を今回はこのように考えてみました。
まとめると、

・共和国軍の動きは極めて適正であった。きちんと敵軍の情報を集め、負けない程度の規模にしていたつもりだった。
・しかしそれは常識的な分析であった。
・帝国軍は復興の効率化(トュルク放棄)やコングの効果的な欺瞞によって戦力を低く見せる事に成功していた。
・よって共和国軍の戦力は必要規模に達していなかった。
・ニクス復興完了後、帝国軍はすぐさまコングを戦闘用にした。


あと、帝国軍は復興の合間に座学も密にやっていたと思われる。
共和国軍から見れば「復興の打ち合わせでもやってるんだろう」と思われていたそれは、開戦時を想定した各種軍事的な打ち合わせであった……。
そのような事もあったと思います。


ということで、最初に考えたものよりは、だいぶ実のある導きになってきたかな。
深く考えるきっかけを頂けたことに大感謝!

最初のものは「共和国が愚かだった」という考えが強い。
対して今回のは「共和国だってしっかりやっていた」「でも帝国のやり方が狡猾すぎた」というものです。
この方が気持ちが良い解釈でもあるかな。

という事でそんな風に考えました。
今後まだまだ肉付けしていきたい!
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コメント

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No title

こんばんは、初コメントとなります。
最近このサイトを見つけて暇を見つけてはコラムやレビューを読んでいました。ものすごく熱量のある文章で、特に戦術面のコラムではなるほどなぁと思わされることが多かったですね。
知り合いにゾイド好きはそこそこにいるのですがやはり老舗のサイトさまでここまで生き残っているというのもなかなか珍しいというか…w自分も第二期中~後半から入った比較的若い世代なのでもっと前の世代から知っている人の情報はなかなか新鮮なものがあります。
毎回コメントするかはともかくとして、これからも閲覧していきたいと思いますのでよろしくお願いします。

大きな大戦のあとの復興段階では、両軍ともに相手の動きにはかなり敏感になっていたと思います。そこで相手からの認識を誤魔化すことができれば、それだけで戦略的アドバンテージが生じる分かなり有利に動けたのだろうなあと。
それでもその後のオリンポス山でのデスザウラー復活に対する共和国の動きはかなり早かったような気もする(不完全な状態で戦闘させることができた)ので、そこはやはり共和国の情報戦での強さなのかなあとも思いますね。

FB1巻ではアイアンコングの活躍シーンはほぼほぼ無いように見受けられます(ゴジュラスもですが)2巻以降はpk等が出て来てますがシュバルツカラーのコングが結構やられていますな(装甲の赤い部分はpkと同一部材との記述がゾイドバトルワールドにあった筈だがそれでも最低3機はやられている)。

4巻にてようやくノーマルカラーのスラスター付きが出て来てました。キットパッケージ写真のコングは工場出荷時のカラーだったりして。
FB2巻終盤の時点でゴジュラスガナー70機に対しコング600機、スラスター付き200機とかなり大差を付けておりますが、それ以上にレッドホーン合計5000機のインパクトたるや。ヘルキャットでさえ4500機、サイカーチス4500機、ガイサック4200機と小型ゾイドに匹敵する大量ぶりです。国家予算の60パーセントを軍事費につぎ込んだだけはあります。

トュルク大陸を放棄説、面白い

★「トュルク大陸を放棄する」
面白い説です。
 トュルク大陸にすんでいる住民・部族からしても、移住しないと死ぬだけの環境悪化だったのかなと思います。だから、すんなりニクス大陸に人口と資源を集中できた。

★ゴリラ型ゾイド
 復旧工事用にしたとしても、アイアンコングは共和国軍から警戒されると思います。復旧しようって、どんな感じなのでしょう?
 復旧はハンマーロック以下の小型ゾイドが中心で、再軍事転用の研究もハンマーロック中心。そして、その知見をアイアンコングに転用したとかありえませんか、
 

No title

情報戦というテーマ、興味深く拝見しました。「復興目的」という偽装はやっていそうですね。「軍が復興を支援している」という体にすれば予算として軍事費で計上されていても外国には「復興のため」で押し通せそうです。
ただ、中身がコングそのものでは流石に警戒されそうなので、それらしく作った偽の復興用ゾイドを隠れ蓑に軍備を進めていた…とか。
他方、共和国軍は帝国の西方大陸侵攻に際して割と迅速に30個師団を派遣できるだけの輸送艦隊と兵站組織を整備してはいたので、「攻めてくるなら西方大陸経由だろう」という予測はある程度していたのかも?

一連の帝国・共和国互いの視点から見た戦力の比較・軍備というテーマを見返して気になったのは、「戦力が少なくても初動は攻撃側が有利なのではないか?」ということです。
戦車保有数ではドイツを上回っていたのに分散配置したためにドイツの装甲師団に破れたフランス、日本よりも強大な海軍を持っていながら、複数の大洋に配置せざるを得ないが為に初戦は苦しい戦いを強いられた米英海軍、等のように。
防衛側は手持ちの戦力を「敵が攻めてきそうな場所」いくつかに配置せねばならず、攻撃側は「攻めたい場所」に全戦力を集中させることができる…という面があると思うのです(これは敵地に攻め込んで得た「対岸の領土」にも通じると思います)。
もちろん最終的には「敵が戦力を集中させる前に勝利にこぎつける策」が必要になるとは思いますが…そういえばこれを実現させているのはいずれもゼネバスですね。

No title

少し批判的かもしれないですが、ガイロスの情報戦は綱渡り感が大きいと思いました。
戦後や突然の奇襲(第2次大陸間戦争)など混乱期にリスク覚悟の作戦を展開することで自分のステージに持ち込めましたが、少しでも相手がガイロスの目論見から外れると一気に瓦解したのではと思えます
最悪、プロィツェンの場合、自分が暗殺されて事がばれたら、冗談抜きに旧ゼネバスが根絶やしレベルの弾圧を受けるでしょうし、そこから共和国とガイロスが和解したら中央大陸の旧ゼネバスも差別を受ける可能性もありますし
リアル寄りのバトストではなく、一部媒体のオカルトよりバトスト(暗黒パワーで天変地異とか)も一種の答えだったのかもしれないですね<共和国を無能化するご都合主義よりも暗黒軍の出鱈目さがかえってすがすがしいかもしれないと

後年にプロィツェンは海戦で児戯に等しいとか言って自分が共和国よりも有能のように言ってますが、、結局主力艦隊は壊滅した戦略で勝っても、ただ単に強権振りかざして特攻させた挙句、自分の国ではなく二組織戦わした策略勝ちをすり替えてると思えました
そもそも泥沼の消耗戦に持ち込むために暗黒大陸に引き込む策のために西方大陸での敗戦も後の事を考えると悪手だったと思えますし、<共和国の野生体の確保地化や共和国崩壊後の拠点化など

だからこそ最終決戦でのルドルフ戦は「ゾイド乗り誇りを踏みにじる策略」「自分を有能に見せることによる虚飾」から解き放たれてルドルフへの忌憚なき尊敬心や、もしかしたら出来たかもしれない共和国への和解(自分でなく息子だったらという言葉から、過去の遺恨を試算してくれる可能性の示唆)があったのかもしれないですね

プロィツェンの政策がネオゼネバス再興後の失策と件の児戯に等しい発言から、鬼布辻無惨の「私は間違えない(と言いつつ失策しまくり)」にかぶさって思えたので・・・

No title

>Sさん
お褒めの言葉、ありがとうございます!
長く続けていますが、最初は初代シリーズのメカ生体ほぼオンリーでした。
今では交流を続けて頂くことで全シリーズを積極的に扱えるようになりました。
今後ともよろしくお願い致します。

共和国軍の情報戦はいつも優秀ですね。
開戦前において帝国軍の軍備増強を見抜けなかった失態はあるにせよ、いち早くオリンポス山に目を付けギリギリのタイミングではありましたが復活を阻止したのは凄い事だと思います。

>とろんとさん
1巻ではコング活躍シーンはないですね。
後方からミサイルで火力支援してたのかなあ。
シュバルツコングは随所でやられてますね。デストロイヤーキャノンで吹っ飛んでる機体も……。

レッドホーンの5000機は私も凄すぎだと思いました。
もはやレッドホーンだけで勝てそう……。

>アンキロさん
トュルク人にとって、「まだしも環境の良いニクスに移住できる」というのは悪くない話だったと思います。

復興のコングは次の記事を参照してくださいませ。
そのように考えてみました!

>極光さん
復興目的は上手い偽装ですよね。
「復興だ」と言えば文句は言いにくいし、実際に復興「も」やるだろうから、偽装もしやすい。
ゴリラ型以外の復興用ゾイドも隠れ蓑にしたと思います。
帝国軍はホエールカイザーやホエールキングを大量に保有していますが、それもこれに該当するんじゃないかなぁ……。

「初動は攻撃側が優位」というのはその通りですね!
やはり攻撃する側は狙いを定める事ができる。対して防衛側は全周囲を警戒する必要があって、それを完璧にしろと言われるといくら資金があっても無理という……。
D-DAY上陸作戦もまさに。

>デスペラードさん
仰る通り綱渡り巻は凄いです。
計画に遊び幅が少ないというか、少しの破綻も許されない感じがします。
しかし「それくらいのリスクは背負わないとゼネバス帝国は再建できない」というプロイツェンの覚悟だったと思います。

リスクが本当に発動した時は…、うーん。
誇り高いゼネバスの息子として「誇りある死は虐げられる生よりも尊い」という意識が強くあったのかも……。
暗黒大陸に居る旧ゼネバス帝国兵というのは、まさに「兵士」です。
民ではありません。民は中央大陸に居ます(共和国の国民扱いになっている)。
兵士であれば、「誇りある死を望め」という考えは勧められやすいと思いました。

プロイツェンの支持率は西方大陸戦争終結後から暴落したと思います。
おそらく辞任待ったなしだったんじゃないかな。
しかしそれも計画が最終段階に近づいたのでどうでも良い事だったのかな、とも思います。
この辺の妄想はまた後日!
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