切断翼

単語で一般認識と実際の意味が違うことはよくあります。
「他力本願」とかが分かりやすい例でしょうか。

軍事用語でも一般認識と現実が違うことはよくあります。
その代表格は「ゼロ距離射撃」でしょう。
難しいのは実際の意味を知ったとしても「一般認識がそれである場合、用法はどうするべきだ」という問題が起こることです。

さて今日は「切断翼」の話。


我々ゾイダーの中で切断翼と言うとレドラーの尾部に付いているアレでしょう。
カミソリのような切れ味ですれ違いざまにプテラスを切り裂く。
すごい装備だと思う。
「機銃付けろよ」というのはもっともな意見ですが、地球的な感覚ではある。
実際にあれで制空権を獲得したのだから有効な装備なのでしょう。
また後年のストームソーダーが同様の装備を付けている事からも有効性が伺えます。
ゾイドと一体化して戦う特性ゆえでしょうか。
たしかに野生の鳥は爪やクチバシが武器。それを考えれば、全く未知の射撃武器を付けるよりも、特性が割と近い切断翼を付けた方が使いやすいというのは一定の説得力があります。

さて切断翼です。
「このトンデモ装備は地球でもあるのか」というと、実は切断翼を装備した飛行機はあります。
いやしかし、その内容はちょっとガッカリです。

装備したのはイギリスの「スピットファイア」


これは翼のタイプが3タイプあって、うち一つが切断翼を持っている。


※最初の写真のは通常タイプ

切断翼は低高度でのロール特性向上と速度増加を目的としたタイプで、戦争後期に多く生産されました。
見ての通り、読んでの通り。切断する目的ではありません。
夢のない話ですが、翼の端をズバッと「切断」しているから切断翼なわけですね。。。

日本でも零戦32型が同様の翼を持っています。
ちなみに切断翼を装備したタイプはスピットも零戦も「見た目から優雅さが消えた」ということで人気はイマイチ。

繰り返しになりますが、普通の翼の端を切り落としただけなので、これで敵を真っ二つに切り裂く事は不可能。
そういう目的ではない。敵を切断するのではなく自分の翼を切断したのだ。
夢のない話です。

そもそも、航空機の翼は揚力を出すためにけっこう分厚い。
爆撃機や旅客機などの大型機は特に分厚くて、かつては翼の中に客室があるものが試作されたこともあります。


これはソ連のK-7。とんでもない分厚さが分かると思います。
K-7は極端な例ですが、単発戦闘機であっても翼の中には機銃を仕込んでいることを思えば決して薄くはない。そこそこ分厚いことが想像できるかと思います。

ただし……、「翼が分厚い=速度にとっては障害」なので、ジェット機の中には非常に薄くなっているものもあります。
その中でも特にF-104の翼は薄いことで有名です。


米軍初のM2級戦闘機。
「スターファイター」とか「最後の有人戦闘機」とかの愛称があります。当事としては究極の性能を求めた戦闘機でした。

この戦闘機、高速性を追求しているので翼がめちゃくちゃ薄い。
そこで以下のような逸話があります。

togetter

翼がカミソリのように固めの野菜でもスパスパ切れちゃう。
整備は非常に危ないので、普段は翼に安全ようのカバーをしているそうです。
ここまで極端な戦闘機はそんなにありませんが、これはゾイド的切断翼といっていいかもしれないなぁ……。

といっても「敵にぶち当てて切り裂く」ような強度はありません。
鳥くらいであればともかく、敵飛行機にぶつかれば自爆と相成るでしょう……。

やはりゾイドのような敵を切り裂くブレードはないのか………というと、近いものはあったりします。


こちらは旧日本陸軍の三式戦闘機「飛燕」
戦争末期にはB-29の迎撃で奮戦しましたが、いかんせん高々度性能が足りなかった。
高度12000mを飛ぶB-29に対して性能が不足しすぎていた。
通常装備では同高度に行くことすらままならない。
そこで機銃や防弾板などの重量物をのきなみ撤去し、12000mまで上がれる仕様にした。
でも上がれたところで機銃がない。どうするか。
それは空対空の特攻です。「震天制空隊」と呼ばれる。

飛燕に関しては次のような伝説的な逸話があります。
飛燕がB-29後方から体当たりを慣行。しかしわずかに外れB-29の下側にもぐりこむ形になった。
そこで飛燕はプロペラをB-29の下面にブチ当て攻撃。下面をぐちゃぐちゃにした。
更に上側に移動し上部もめちゃくちゃに切り裂き離脱した……。

プロペラはものすごい勢いで回転しているので、当てれば敵を破壊することは確かにできます。
イメージとして扇風機のブレードにカミソリを付けて指などに当てる感じ……。

ただし上記伝説的な逸話には懐疑的な意見もあります。
この戦果は部隊の初陣の時に起こったとされています。同日の同部隊には「体当たりをして部品の多くが落伍したが奇跡的に生還した機」なんかも出ています。
ちょっとできすぎてます。
末期の「体当たり以外にマトモな戦果が望めない」ようになっていた状況。そして「新部隊の初陣」という状況。
これを考えると、景気の良い話をでっちあげてしまおうという流れになったとすれば分かる話です。

そもそも、プロペラの回転力をもってすれば確かに敵機を切り刻み破壊することはできる。ただ同時にプロペラ側も強度限界をはるかに超えているのでぶっ壊れる。
上記伝説は「下側を破壊した後に上に移動している」ので、この辺が特に怪しい……。
実際は、あったとしても上面か下面かどちらかをプロペラで破壊した。その後に落伍した という位でしょう。
これだけでも凄い戦いですが、逼迫する状況の中でもっと明るい勇ましい話題が欲しい。そういうわけで、景気付けで話が盛られて伝説が出来上がった事情を思います。

まぁ、懐疑論はこの辺で。
いずれにしても(自身も無事では済まないとはいえ)プロペラで敵を破壊することは可能。
敵を切り裂いて破壊する飛行機用の究極格闘装備は「あった」と言えるかな。
自身も無事ではすまない……ギガのコア砲クラスの激ヤバ戦法ですが。

ゾイドの切断翼は、
・名称はスピットファイアなどの翼の処理
・切れ味の良さの発想はF-104
・破壊力の高さは飛燕の馬乗り戦法

そんな総合で、それをゾイドらしく煮詰めた結果の装備と思ったらとても面白いなと思いました。
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